狐羽噺

狐羽の台本製作所

狐羽-kohane-

空白戦争



S/シロ 不問
K/クロ ♂



※雰囲気台本です。
深く考えず雰囲気のみをお楽しみください。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


S「ねえ。僕は知ってるよクロ。
また行ってたんだろう?」


K「うるさい」


S「きっと僕しか気づいてないよ」


K「知ってる」


S「薔薇の棘は痛かった?」


K「そんなに」


S「そっかあ。クロは強いなあ」


K「なあ」


S「ん?」


K「いつまで続けるんだ?」


S「いつまでだろうね。
この世界が平和になるまでかな」


K「俺らしかいないのにか?」


S「そうだね。二人きりだ」


K「こんな世界に平和なんて絶対に来ない。」


S「そう言いながらまた蘇らせにいったんだろ?」


K「………」


S「無駄だよ。わかるでしょ?
こんな世界になっちゃってからクロは何度もみんなの元に行くけど一度だって助けられたことはないじゃないか」


K「うるせえ」


S「それなのにまだやめないなんて。
いっそ諦めた方が平和なんじゃない?」


K「うるせえ」


S「クロ。君だってわかってるはず
華に包まれた彼らはもう死んでるんだよ。」


K「うるせえ!!わかってんだよ!!!」


S「クロ!!」


K「俺らだっていつ捕まるかわかんねえ。
だけど、それまでの時間を無駄にしたくはないんだよ」


S「クロ….大丈夫だよ。君は捕まらない」


K「なんでわかんだよ」


S「捕まってる奴らはみんな罪人だからさ。
クロ君は優しい。嘘はつかないし、人を思えるし、何よりまだ捕まってない」


K「それだったらシロだって」


S「僕はいつ捕まってもおかしくないよ。
クロはみんなを助けようとするけど、僕はしてない。」


K「俺はお前がいないと」


S「それは僕も同じだよクロ。君がいるから僕は今狂わずに済んでる」


K「わかんねえけどな。
この世界自体本物なのか偽物なのか」


S「嘘だったらどんなに良いか。
友達を失わずに済んだし、いつ僕の足元から華が咲くかわからない恐怖に震えずに済んだ。
夢なら今すぐ醒めたいよ」


K「...少し安心した。」


S「なにが?」


K「恐怖でまともに寝れもしねえが、とりあえずシロの中にも
仲間たちの思い出が詰まってた。
俺だけが囚われてる訳じゃなかった。」


S「クロ….今だからいうけど、僕一度だけ人を殺めたことがあるんだ」


K「は?」


S「そいつは病気だった。とても苦しい病気。
これといつまでも戦うくらいならいっそもう消えたい。
いつもそう言ってた。
ある日そいつが言ったんだ
もう限界だ。耐えられない。僕の命を止めてって。」


K「お前が…止めたのか?」


S「うん。
あっけなかった。
すごく怖かったのにたったひとつの管をぬいただけで終わってしまった」


K「……」


S「君は僕を優しいと思う?」


K「俺は…..」


S「今でも不思議なんだ。
どうして僕は捕まらないんだろうって」


K「優しいから...じゃないか…?」


S「ははっそんなこと言ったらダメだよ。
僕は人殺しなんだから」


K「どのみちそいつは持たなかった」


S「そういう問題じゃないんだよクロ。
終わる前に終わらせてしまったんだから」


K「シロ….?」


SN『彼は僕のおかしさに気づいてしまっただろうか。
なんとなくわかっていた。もうすぐこの世界が終わる。
どちらかが消える。僕か、クロか。あるいは二人ともなのだろうか。
それを感じたらふと、彼へ隠してたことを全て言いたくなった』


K「なんか変だぞ?どうしたんだ」


S「もしかしたら次のターゲットは僕なのかも」


K「は?お前まで俺の前から消えるってのか!?
ふざけんな!」


S「そう言われても華には逆らえない。
きっと逃げれない」


K「わからないだろ!?」


S「もし逃げれたとしても、きっとターゲットなのは変わらない。
無意味だ」


K「俺が倒してやる」


S「どうやって?
武器も力ももうないよ」


K「じゃあ、俺が代わりに」


S「それじゃあ僕はどうなるんだ!
僕だってこんな世界で一人は嫌だよ!!!」


K「じゃあどうするんだよ!」


S「っ!….華が動く音が聞こえる。
地面が揺れてる。罪を知った華が僕を捕まえに来たんだ」


K「やめろよ。消えんな。」


S「確かに今でも毎日欠かさず華に包まれた仲間たちを助けに行っちゃうクロだもんね。
僕がいなくなったら生きていけないかも」


K「当たり前だ。だから捕まるな」


S「それはむりだよ。クロもわかるでしょ?」


K「…….嫌だ」


S「クロ」


K「俺、無愛想だし面白くもないし不器用だし…
今まで受け入れてくれるやつなんてほんの一握りだった。
けど、お前が仲間をくれた。楽しかった。
だから、シロがいないのは嫌だ!」


S「僕もだよクロ。君が一番大切だよ。
でも無理なんだ、助かったやつは見たことない。」


K「…….」


S「それか二人で捕まる?」


K「……っ!」


S「そしたら悲しくも寂しくもない」


K「できるのか?」


S「わからないよ。華のことは何も。
でも、きっと平気だ。白と黒は真反対に見えて、実は同じだから。
誰でもシロとクロを必ず持ってる。」


K「わかった。試してみよう」


S「うん。」



SN「クロの細い体を引き寄せる。
ぴったりと寄り添って僕は、否、僕らはその時を待った。
地面の揺れが激しくなる。」


KN「まるで一つに溶け合ったみたいだ。
自分を腕で包むような感覚で、なんとなくシロが言っていたことがわかった気がした」


SN「ぶわりと風が下から吹き、鼻が焼けるような濃い百合の匂いが僕らを包んだ。
僕らは百合に包まれるみたいだ」


KN「思ったよりも暖かく、安心感を抱く。
ああ、みんなもこうだったのか?苦しくなかったのか?
それなら良かった。あいつらが辛くなかったならそれで」


SN「さよならクロ。でもなんだかクロにはまたすぐ会える気がする」


KN「意識が落ちる。」


SN「眠る。」




se:心電図



S「ん…..。」


SN「なんだろう。まぶしい。薬品の匂い…..


あれ、確か俺は……



僕の命を支える管を確かに抜いたのに。


どうして生きているんだ……?」


S「….ク…ロ…?」


KN「シロ」


S「ああ。…..良かった..僕。生きていたんだね」


KN「ああ。俺は生きてるよ。シロとして」


S「そっか…僕は…クロで..シロなんだ」




ーーfin

×

非ログインユーザーとして返信する