狐羽噺

狐羽の台本製作所

狐羽-kohane-

黒猫のいる街


男2:女2:不問1:計5


性別変換可

A:アニーシャ(不問)
K:クロウ♂
C:クロナ♀
T:トニー♂
M:ミーナ♀

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AN「夜の街、ビルに挟まれた暗く細い道の奥
見えないどこかで今日も何かが起きている
悲鳴が飛び交う裏道は彼が居なくなった世界では日常なのだ」


T「はぁ。いっつもいっつもこんなんじゃ
この世界はいつ平和になるって言うんだ。
警察だって暇じゃねぇって言うのにあちこち行かされてよぉ。」

A「なあ、あの噂知ってるか?」

T「…?どの噂だ?最近は色々と噂が飛び交ってるからな。
どの噂だか検討もつかねぇ」

A「黒猫の噂だ」

T「あぁ。あんな噂信じてる奴なんかいないさ」

A「夜の街に現れる、優秀な情報屋。
情報を得るには一つの質問に答えるだけ
答えを間違えた奴が帰って来た事はない……」

T「間違えたら帰ってこれないって…
帰って来なかったのにどうやって質問を間違えたって分かるってんだ。
そもそも誰も帰って来なかったって話も出てる。
噂流すならもっとマシな噂にして欲しいもんだ」

A「そいつは星がよく見える所に現れる。
山の開けた所、高いビルの屋上、時にはプラネタリウム…。」

T「おいおい。まさか信じてるんじゃないだろうなぁ?」

A「いや…信じてるというか..」

T「…?」

A「……なぁ、8年前の事件覚えてるか?」

T「8年前…?神隠し事件か」

A「…そうだ。」

T「それがどうかしたか?」

A「実は」

T「…」

A「被害者なんだ」

T「誰が」

A「俺が」

T「…は?あの事件の被害者は皆遺体で発見されたはずだ」

A「…黒猫」

T「…ん?」

A「黒猫なんだ。あの事件の犯人」

T「情報屋が犯人…?」

A「黒猫と呼ばれていたんだ。彼は
…….情報屋も黒猫。何か関係があるんじゃないかと思っている..」

T「それで、か….なるほどな」

A「あいつ、俺を捜してるんじゃないかと思うんだ」

T「そりゃまたどうして?」

A「ゲームを出れたのは俺だけだったんだ」

T「ゲーム…」

A「あの噂を嘘だと思ってるなら行くのは俺だけで良い」

T「…….まだ信じてる訳じゃないが..相棒の為だ。勿論行くさ」

A「(頷く)」

T「んじゃ、星の見える場所探しに行くか」


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T「星の見える場所、ここが最後だ。
ここに居なかったら今日はもう帰るぞ」

A「分かる…..ここにいる…」

T「そうかよ」


M「ニャア….ニャア….ニャア,,,,,,,,,,,,」



T「あいつか……?」

A「わからない….」

T「でもニャーニャー言ってるしあいつだろ」

A「行くぞ。…….っ!」

M「にゃあ?」

T「いつの間にここまで…!?」

M「誰だぁ?お前ら」

T「あー俺らは…」

A「……..お前」

M「…にゃ?」

A「黒猫じゃ、ない…」

M「…..っ!」

A「違う」

M「ふーん…正解にゃあ」

T「正解って…?」

M「やっとにゃ。お前、生き残りか」

A「……。」

M「ウンウン。本物みたいだにゃ。
その怖がる目は、経験者にしかできない。」

T「おい!どう言う事だ?説明しろ」

M「なんだこいつ…こいつはゲームすら参加してないゴミだろう?
殺して良いにゃ?」

T「な…っ!」

A「..だめだ。」


(間)


M「ふ〜ん…..分かったにゃ。
やっと会えた事だし今回は許してやるにゃ」

T「……はぁ、はぁ」

A「早く連れて行ってくれ」

M「そう急かすな。ちゃんと連れてってやるさ」


T「……おい、アニーシャ。なんなんだあいつは」

A「わからない….」

T「は?分かってて話してたんじゃ…」

A「いや、知らない、、、あいつはゲームにも居なかった」

T「そのゲームっていうのは…?」

M「あんまり無駄話してるとどうなるかわからないにゃ?」

T「….っ!わ、分かったよ。黙る」

M「賢い選択にゃ。ふふ」

A「……..」



M「さ、着いたにゃ。きっとマスターも喜ぶにゃ,,,」

T「ただの倉庫か…?」


M「マスター!やっと居たにゃぁ」


C「良くやったミーナ。流石僕の猫」

M「嬉しいです….マスター…」

C「さあ、ご褒美もらっておいで。
それで…どっちがアノコかな?」

T「…俺だ」

C「殺されたいの?」

T「あんたらの事を全て知ったら殺されてやっても良い。
噂の真相、神隠しの全て。話して貰おうか」

C「はぁ。ミーナのやつ…厄介なの連れてきたな….
ご褒美取り消しだ。」

A「あんたも、違うな」

C「は?」

A「あんた黒猫じゃない」

C「はぁ、あのなぁ。流石に勝者でもここまで馬鹿だと歓迎出来ないな」

T「アニーシャ、どういう事だ?」

A「黒猫は喋らないんだ。」

T「喋らない…?」

A「あいつの声を聞いた事は一度も無い」

C「なら、なぜ僕が黒猫じゃ無いと言い切れる?
勘だ、なんか言ったら…勝者のお前ならどうなるか分かってるだろう?
遠い昔死んで行った奴等の山に加わるか?」

A「そんなつもりは無い。だから言ったんだ」

C「…………..ふふふ……あはは…はははははははは!!!!!」

T「!?」

C「あーーーー面白い」

A「…..」

C「あんたが初めてだよ。見破ったのは。
そーさ。僕は黒猫じゃ無い。本当にアノコみたいだねぇ?
でもおかしいなあ、、アノコは…..女の子だった。」

T「は…?アニーシャ…?」

A「残念だが。俺は女じゃ無い」

C「ふーん。分かったよ。そういう事にしておこう。
じゃあ、本命に会わせてあげよう。」

T「やっとか…..」

C「と、行きたいところだが、あいつはもう居ない。
僕が……殺したからね..」

T「は,,,?どういう事だ。」

A「死体を見せてくれ。会いたい」

C「うん。良いよ」

A「…邪魔する」

T「おい待てアニーシャ!そいつの死体を見てどうする?
ここまでハズレ続きなんだぞ?
死体があるかどうかも、そもそも本当に黒猫と繋がってるのかすら分からないんだぞ」

A「一度、この倉庫にはきた事あるんだ」

T「ゲームでか?」

A「あぁ。」

T「そのゲームってなんなんだよ…?」

A「生き残れば勝ちの、ただの殺し合いだ」

T「ただの…?人の命がどれだけッ」

A「分かっている。人殺しのくせに警官なんて、」

T「……やめろアニーシャ。俺は..お前を人殺しなんて呼びたくねぇ」

A「…..。分かった。」

T「許されないのは黒猫だ。ここに居るかどうかは分からないが、
一応見てみる価値はあるか」

A「あいつは死なないと思うんだ」

T「不死身だって言うのか?」

A「そうじゃ無い、、けれどあいつは…」

C「無駄話はそこまで。この奥だよ」

T「….ここに黒猫が,,,」

A「…….」

C「喋る死体もただの死体…全て絵空事だよ
喋るからと言って生きているとは限らないんだから」

(部屋の中に入る)

A「…………黒猫」



K「……..」

T「お前が…?」

K「久しいな。アニ」

A「…..!!!」

K「喋ると思わなかったか」

A「声を聞くのは…初めてだ」

K「そうだろう。」

T「お前….腕どころか足も無いじゃ無いか…..」

K「…誰だ…?..... まぁ、知ったところで殺す事はもう出来ないのだけれどね」

A「がっかりだ」

K「そう言われるのも無理は無い。
あの頃の私はクソガキ殺しに必死だったからなぁ」

T「クソガキ殺し…?」

K「あぁ。君は知らないか。きっと良い子だったんだろうねぇ。」

T「どう言う事だ。半信半疑でここまで着いてきたんだ
何も理解出来ていない」

K「うん。全てお話ししよう。」

A「…あの時の俺は…」

K「うん。君は…変わった。色々と」

A「……」

K「まあ良い。それで、昔の話だったかな?」

(間)

K「あの頃は飢えた子供が多くてね
私は世界を綺麗にする事で精一杯だったんだ…。
確かに辛い事をさせてしまった。
今ではすまなかったと思ってるよ」

C「……空っぽだなぁ」

K「クロナ」

C「今のクロウは一つもかっこ良く無い。
昔はキラキラ輝いてた。でも今ではまるで力尽きた蝉だ。
あと10秒もあれば生き絶えるであろう蝉。
それもこれも全部アニーシャ、お前のせいだ」

A「俺は」

C「お前が逃げ出したせいでクロウは死んだ。
お前にしか闇を感じなくなってたからだ
あれからゲームは行われてない
行えなかったんだ。覇者がいなかったから」

K「アニーシャは余りにも狂ってた。
私は忘れた事が無いよ。君の今すぐにでも人を殺めそうな視線
私に向ける殺気は子供とは思えなかった」

A「あのゲームで俺は冷静になった。
だから逃げ出したんだ。クソガキが一人まともになったんだ。
あんたとしては本望なんじゃ無いか?」

T「待ってくれ、着いていけねぇ。
お前らは説明の意味をわかって話してるか?」

A「俺が母親の形見のくま人形と共に路地裏でひっそりと生きてた頃の話だ」

K「いや、アニはひっそりと言うには幾らか有名だった
特に人の少ないパン屋ではな」

A「まぁ、あのパン屋からは少しご飯を頂いてたが」

C「それがクロウのクソガキセンサーに触れたのさ。
僕がアニーシャを迎えに行き、クマの人形を人質に会場まで連れてきた」

T「アニーシャはさっきまでお前を知らないようだったが?」

C「そりゃそうさ。今と昔では入ってる殻が違うからな」

T「殻….?」

K「いちいち気を止めていたら話が進まん。
その話は少し後に回そう。
アニが此処に来たのは15の時だった
あの頃は酷かったね。鎖の巻かれていない猛獣だったよ
アニをゲームに入れたのは正解だった」

T「ゲームのルールを教えてくれ」

C「僕が教えるよ。今のクロウにはゲームを語って欲しく無いしね。
ゲームは簡単に言うと、いい子になるまで逃がさないって事だ
いい子になるまでに死ぬ事だってザラだけど、どうせ家なし家族なしだしね」

T「お前……」

C「あーあー怒らないでよ
嘘では無いだろ?そう言う奴がすぐ犯罪に手を染めるんだ。
それの道を正すためにやってたんだ」

T「正すために人殺しをさせるってるのか?」

C「それが目的じゃ無いんだよ。
悪い事を教えるんだ。仲間が居なくなっていく恐怖からね
ゲームは勝ち抜き戦。5チームに分かれて代表が戦う
戦う前に自分が犯した罪を一つ言う
勝つ事で一つだけ罪を消費できる。
犯した罪を全て言い終わる事ができたら外へ出れる
勿論みんな生きたいんだ。手抜きはしない。
故に死人が出る、それだけだよ」

T「対象は子供だったんだろう?
なんで子供だったんだ。大人ではダメだったのか」

C「子供は素直だからね。生きたいから僕たちに従う。
でも大人だったら腐りきった脳みそで同盟なんか組んで集団で僕たちを殺しにくるかもしれない
それはごめんだからね」

T「死ぬべきはお前らなんじゃないか…?」

K「そうかもしれないな。だが子供ほど残酷なものは無いんだよ。
アニはね、人殺しが悪い事だと思っていなかった。
死ぬのも怖くなさそうだった。
けれどそれは大人のような歪んだ思考が故ではなく
純粋に人殺しを遊びと思っていた」

A「…….」

C「ははは….っ今更後悔でもしてるわけ?
あんたは54戦して無敗、罪も後24残ってた。なのに逃げ出した
怖くなったのか?」

A「何もなかった。
あの殺しには…生きる大切さを何も知らなかった俺は
何の為にしてるのか分からなかった。
そんな時に母さんが死んだ時を思い出したんだ。
何もかもどうでも良くなる程の虚無感、それなのに
言い表せない程の辛さと悲しみを」

C「だから逃げたんだろう?」

K「違うさ。会いに行ったんだ」

A「クロウが出してくれた。クマは取られていたけど」

C「は….?」

A「12時に戻る約束だったがその時保護された。
そのまま警官になるように育てられた」

K「あの時私は終わったと思ったよ
アニに裏切られたのだから」

T「裏切られたって….人殺しをさせといて何を勝手に」

K「ああ。だから今は後悔してるのさ」


M「まーーーーすたあああ!!!」

C「ミーナ」

M「ご褒美だと思って行ったらゲームに参加させられたんですが
どう言う事ですか!!!!」

C「ああ。だってミーナが厄介な男まで連れて来たから」

T「おい、待て、、、ゲームだと…?」

C「うん。ゲームだよ。それがどうかした?」

K「クロナ…?」

C「あー、クロウにも言ってなかったっけ?
またイチから始めたんだよ。…..ゲーム。」

T「逮捕だ!アニーシャ!... アニーシャ?」

A「………」

T「アニーシャ!!!手錠だ!」

A「…….っ!あ、あぁ」

C「悪は消えるべきだ!!!!」

T「一番の悪はお前だそろそろ気づけ!
アニーシャ応援を呼んでくれ」

A「分かった」

K「クロナどう言う事だ?
もうゲームは終わりにしたはずだ」

C「兄さん、兄さんの日記を読んだ。
アニーシャへの愛ばかり綴ってあった。
僕のことは……私のことは何一つ書いてないのに…」


K「クロナ…?」

C「おい、お前….お前だ、名は」

T「トニーだ…」

C「そうか。トニー、お前さっき一番の悪は私だと言ったな。
それは間違ってる。一番の悪はクロウ、私の兄だ」

T「兄……どう言うことだ.」

C「そのままの意味さ。
クロウは僕をアニーシャを探す駒に使い、8年前からアニーシャが消えるまで一日足りとも欠かさず
書き続けた日記には私の名前は一度も出てこない。
きっと、私など家族でも何でもないのだろう。
私の家族もミーナだけさ。」

M「マスター..」

C「だからゲームも二人で始め、書き始めた日記にはミーナも書いた。
クロウとは違い僕は、人を愛する事ができる。
今度のゲームマスターは僕だ。だからクロウの腕も脚も気持ちも、全て切った」

A「本当の人殺し」(走り出す)

T「あ!おい!アニーシャ!!」

K「ゲームに向かったんだろうね。
彼女はゲームが大嫌いだからな」

C「ちっ……」

T「なあ、お前はクロウが好きなのか
ゲームが好きなのかどっちなんだ」

C「…..ゲームに決まってるだろう」

T「求めても手に入らない事はある。
確かに、見せかけだけは手に入るだろうな。お前の手足、クロウの物だろう。」

C「……..っ」

T「体を隠すようなその大きな黒いワンピースは繋ぎ目を隠すものか
それともただの独占欲か」

C「….違う、、、」

T「何がだ。クロウを自分の物にしたかったんだろう?」

C「だって…….ゲームはクロウとの最後の繋がりだったんだ。
でも、あいつが逃げ出したから無くなると思った
家族でいたかった。その為にはクロウが逃げないように閉じ込めて
もう一度ゲームを始めたら……僕がクロウになれると思った
それでアニーシャを連れ戻せばまた、元に戻る。
まだ家族だったあの頃に」

T「……もしかしてお前…..噂を聞いたやつが帰ってこないのは
ゲームに取り込んでいたって言うのか…?」

M「マスター、もうおしまいです。
家族にはなれない。私とマスターも、マスターとクロウさんも。
本当は止めるべきでした。ゲームをしなくても良いなら何でもしようと思ったけど
もう、無理です。」

T「お前も…….?」

M「はい。経験者です。
今のゲームの参加者たちは汚い世界で鍛えられた汚い大人です。
早く行かないとアニーシャさんでも負けるかもしれない」

T「….なぁ、お前にゃんにゃんは….?」

M「アニーシャさんが来るまでの狂ったピエロですよ。
さ、早く迎えに行ってきてください」

T「あぁ。ここは任せて良いか」

M「はい。もちろんです」

T「助かる。」(走って行く)

M「マスター….私はマスターが大好きにゃ」

C「無理しなくて良い」

M「無理なんてしてません。ゲームから抜けたかったのはほんとです。
でもあの頃はもうゲームのルールなんて皆無でしたし。
最後に決めたのは私ですにゃ」

K「もう、無理はするなクロナ」

C「兄さんは、罪人です」

K「手足を捧げても償えないか」

C「当たり前だ。これから牢屋でしっかり反省する事だ」



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T「アニーシャ!!!!!」


A「………トニー」

T「これ……アニーシャがやったのか….?」

A「ああ」

T「死んでは…ないよな」

A「殺してはない。ゲームと言うより乱闘だった。
やはり意味のない罪滅ぼしとも呼べぬゲームだ」



T「…アニーシャ。お前女なのか」

A「……どうだろうな。
トニーは俺が女だったらもう相棒じゃなくなるか?」

T「んなわけ無いだろ。でも、この人数倒すのは女じゃ無理なんじゃ無いか?」

A「俺は普通じゃ無いから…..」



A「あの時…クロウが俺を母に合わせに行かしてくれた時
ゲームを外から見てやっと気づいたんだ。
生きるってのがどんなことか。
俺のチームから死人が出た事はなかった
いつも俺が全員倒して、殺していたから」

T「アニーシャ」

A「やっと間違いに気づけたんだ。
俺のチームにはいつも幼い奴が集まってた。兄や姉がこの子を守ってくれって預けられてた。
その時はなにも考えてなかったが、今ならわかる。
やっと分かったんだ。
本当は警官に保護されたんじゃ無いんだ。
逃げ出した。戻りたくなかった。
きっとクロウはそれに気づいてた
だから尚更ゲームをやる気が失せたんだろう」

T「俺はゲームを知らない。残酷な子供時代をしらない。
確かに知らないからと言ってはいそうですかと流せるもんでも無い。
でもお前はちゃんと背負って生きてる
罪を意識して生きてる。
これからも一時も忘れる事なく生きていけ。
それなら、またお前を相棒と呼んでもいい」

A「トニー…すまない。ありがとう」

T「お前がいなきゃこの事件までたどり着く事すらできなかっただろうしな」

A「あぁ」

T「さ、逮捕だ。」




K「なあクロナ。私はお前を愛していなかったわけじゃない。
とても愛していたさ。お前を日記に書かなかったのも、ゲームに関わらせず迎えを任せたのも全部
全てが暴かれたとき、お前の名前を出さないためだったんだ」

C「嘘だ」

K「いいや、本当さ。
ああ、手がないからお前を抱きしめる事すらできないな」

C「…いいよ。私があんたを抱きしめてやる。」

T「……仲直りできたか?」

M「はい」

C「ミーナ!勝手にはいとか言ってんな!」

M「マスター怖いにゃ」

C「この…!」

M「ふふ」

K「ああ。そうだアニ。こっちにおいで」

A「…」

K「わたしの後ろにね、あるはずだよ」

A「……クマ」

K「お前の大事なクマだ。
あの時、くそガキが嫌いだったくせに
私はちっとも怯えずにゲームを進めるアニに一つの美しさを感じていた。
君の終わりの見えない闇にね。
そのとっても重たいクマに君を重ねていたんだ。
君は一人殺すたびにその子の一部をそのクマに詰めていた。
覚えているかい?」

A「……ああ。」

K「そしていつもクマに向かって言っていた。
お母さん。また一ついい子になったよって。
とても可愛くて愛しくて滑稽だった
何度笑いを堪えたことか」

A「このクマはもういらない」

K「親離れできたのか?」

A「母がいなくても、もう一人でいきていける」

K「そうかい」

T「思い出に浸っているとこ邪魔するがお前らは逮捕だ。
応援はもうこの倉庫を囲っているし逃げる場所はない
game overだ」

K「また会えて嬉しかった。今度こそさよならくらい聞かせてくれ」

A「さよなら。黒猫」

K「ああ。楽しかったよ。さよならアニーシャ」

T「まずは手のあるお前らからだな」

C「いいかクロウ。お前は私の唯一の兄であり家族だ。
きっともう会う事はないだろうが、愛している」

K「私も愛している。クロナ」

M「マスター私マスターを幸せにしてあげたかった。
本当に、大好きですよ。」


C「..........知ってるにゃ」


T「逮捕だ」


K「私はもうすぐ命が尽きる。
切り離したままの腕と足はとっくのとうに腐っているからね」


A「……くそ」


K「来世は誠実に生きるよ」


T「来世すらあるかわかんねえけどな」


K「いいや。生まれ変わるさ。黒猫にね。にゃぁお」


T「はぁ。」


K「その時は飼ってくれよ?」


T「いやに決まってんだろ」


K「ひどいねえ…ふふ」






AN「こうして終わりを告げた神隠しは、
事件の全貌を世間へとマスコミが暴き大きな波紋を呼んだ。
黒猫を正義の味方というやつもいた。
それはきっと黒猫がなりたかった姿なんだろう。」



T「ところでさ、結局性別どっちなんだ?」


A「…….女だ」


T「ええええええ!ゴツすぎだろ!!!」


A「悪かったな」


T「ま、そんな事はどうでもいんだけどな!
無事昇格したことだしこれからもよろしくな」


A「もちろんだ」


T「良いパートナーだぜほんと」




AN「黒猫のいなくなった街では、
暗く細い道の奥今日も何かがおきている。」



T「よっしゃ!今日も事件解決と行くか!」


A「ああ!」

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