狐羽噺

狐羽の台本製作所

狐羽-kohane-

リリー

(朗読の場合)
不問


(掛け合いの場合)
L:リリー ♀
S:主人公 ♂


朗読用として書いたので比率が偏ってます。


ーーーーーーーーーーーーーーー


SN:
夏は暑いなと思った。
蝉の声がうるさくて、アイスが美味しくて
星が綺麗で。


こんな日にはあの子に会いたい。



リリー (タイトルコール)



SN:寝苦しい夜、気づけばその子は横にいる。
僕の頭を優しく撫で
優しく微笑みながらこういうんだ。


L「苦しいことは寝れば忘れられる。
私は幸せになる方法を知っている……だから」


SN:その先はいつもきこえない。
続きを聞く前に寝てしまうから。


次彼女にあった時続きを聞くことにしよう。




S「はあ。暑いな....」



SN:暑くて呼吸がしづらい。
薄い毛布すら邪魔で、まとわりつく空気が邪魔でいつもこんな日は気づけば彼女がそこに、、、


S「....?あれ?」


SN:隣に彼女の姿は無い
名前を呼ぼうとして彼女の名前すら知らなかったことを知る。


S「........眠れない。」


SN:彼女がいなくてはじめて夏とはこんなにも苦しく
厚いものなのだとわかった。
ずっしりと重い気温を体に纏いながら
薄いオレンジに光るライトを見つめた


S「今何時だ」


SN:視線を逸らし時計に目を向ける。


S「2時......」


SN:丑三つ時。
そう考えるとぞくっと不安が背筋をはしる。
朝は遠い


L「眠れない?」


SN:静かな部屋に透き通った少女の声。
彼女だ。来てくれた。


S「いつもの様に僕を寝かせて」


SN:そういうとふふっと彼女は笑った。


L「そうね。
あなたはきっと私がいないと眠れない。」


SN:彼女が僕をのぞき込む。
僕を照らしていたオレンジのライトは彼女が覆ってしまった。


S「そうさ。僕は君がいないと満足に眠る事すらできないんだ。だから」


L「私はあなたを眠らせるだけの存在?」


S「だって名前すら知らない。」


SN:彼女は何かを考えたあと、柔らかく笑い小さく頷いた。


L「そうだったわね。でも私の名前は教えられない」


S「どうして」


L「そうね...戻れなくなるから、かしらね」


S「なにから?」


L「.......」


SN:短い沈黙のあと
彼女は少し表情を曇らせて、僕を見つめた
なんだか逸らしてはいけないきがした。


L「私はあなたを眠らせるために来ていた訳じゃないの」


SN:時計を見上げる


L「私は短い針が2を指してから30分の間しかここにいられない。」


SN:それはつまり....


S「丑三つ時?」


L「...そういう事」


SN:昔から丑三つ時は幽霊や妖怪が行動する時間だといわれている。
気のせいか、空気が少し冷えたきがした。


S「じゃあ君は幽霊だってこと?」


SN:言葉にならない恐怖が僕を襲った
彼女から逃げなければ。そう思い体を起こそうとする。が、いつの間にか植物の根のようなものが自分の体に巻きついていた。動けない


L「私はカラーリリーという花がとても好きだったの
くるりとした丸みが可愛くて透き通る白が綺麗で。
私もそうなりたかった。綺麗になりたかった。
だから食べてみようと思ったの
私の1部にしたかった。
焼いて、煮て、ジャムにして色々作って
お酒もカラーリリーで作ったの
何もかもが綺麗だった」


SN:頬を桃色に染めてカラーリリーという花に恋でもしているようだった。


L「でもあの花は違った...私を殺した......」


L「とても痛かった...でも苦しさが体に染み渡る感覚はあのきれいな花が私に溶けていくようでとても素敵な感覚だった。」


S「おかしい....」


L「おかしい...?確かにそうかも。
でも今ではこんなに綺麗になった。あの花のように」


SN:そういった彼女は自分から生えた根を器用に使い部屋の電気をつける。
明るくなった部屋に目が追いつかずチカチカした。


S「ひっ.....」


SN:花と人間が入り交じったその姿に言葉を無くした。


L「ね、綺麗でしょう?」


SN:ほんのり甘い花の香りが濃く部屋にひろがる。


L「カラーリリーは女性の美しさを表す花。
運命だと思ったの。だって私の名前は、リリーだから。」


SN:意識が吸い込まれていく...
眠るのか、死ぬのか。


SN:気がつくと、2時31分


S「助かった.....?」



SN:リリーはとても優しく美しい女性だった。
眠れない夜彼女の優しさに支えられていたから。
けれど、リリーは美しさに捕われた人だった。
美しくなりたかった、それだけのことなのだ。


S「リリー....」


SN:ふわりと、甘い香りがした気がした。

×

非ログインユーザーとして返信する